更新日:2017年08月16日

あなたの畑・あなたの牧場がここにある(アグリロハス8月号)

秋川牧園創業、不可能への挑戦作りに孤独に励んだ青春

秋川牧園が自負しているところに、「私共は、単に食の安心安全に一生懸命にがんばってきたと言うだけのもので終わらない・・・」があると思っています。

一生懸命がんばっている自分に自己満足するだけに終わるのではなく、「新しく科学する、新しく経営する、そして、新しい価値という扉を開く、そして畜産物の生産に貢献したい」と自分に言い聞かせていました。

 

農業は普通の会社では成功しない

私の秋川牧園の挑戦は今から45年前の1972年に遡ります。当時はどん底の中、ポケットにあったわずか5万円からの創業でありました。しかもその上、3つの不可能への挑戦を課していたのです。

その3つの不可能とは、

①無投薬飼育等、安心安全な食べ物づくりそのものが技術的に不可能と思われる時代にあったこと。正直なところ、無投薬飼育が本当に出来るかと聞かれれば、それは言葉に詰まる程、不可能に近いものでした。

②たとえ安心安全な食べ物が出来たとしても、コストが高くなり、買って下さる消費者が無く、経営が成り立たないと考えられたこと。

③農業は企業化に向かない、企業で農業が成功した実例がないと言われていた時代に、農業の会社は経営的に成立しないと考えられたこと。

養鶏、小学6年生、秋川牧園、少年時代さて、当時私はこの中で、何が一番に難関だと感じていたでしょうか?
皆さんは意外と思われると思いますが、正直に言えば、私は③の農業の企業化が一番に難しいと思っていたのです。前項の①と②の課題は、小学6年生から養鶏体験と農業体験に打ち込んだなまなましい苦労と研究熱心への自負がありました。②についても、難しさは大きいものがありますが、消費者に対する科学的、論理的な説得には、ほのかな自信のようなものがあったのです。ところが③の農業の企業化という一番の課題は、企業として馴染まないのが農業(しかも成功例が皆無)ということです。どれも大難題でしたが、その中でも農業の企業化が最大の難関だと考えていました。

 

「コルホーズ、ソホーズは絶対に成功しない」

なぜ、農業の企業化が、それ程難しいのでしょうか?その例として、かつてソ連邦がその実現に挑んだコルホーズ、ソホーズの挑戦があります。まだ、中学3年生だった私が、何とか戦地から生きて帰った父に、このような問いかけをしたことがあります。

「日本の農業は家庭労働で規模も小さくて、これからも大変だが、ソ連では、国家の人材、国家の技術、国家の経営で農業が大規模に行われるそうで、このように国家で農業をすれば大成功するのではないか」と。

それに対して父の放った一喝の言葉は、「そんなものは絶対に成功しない!!」でありました。その答えに納得のできない不満をいだいた私でしたが、二の句もつけない程の父の厳しい形相を見て、私は引き下がるしかなかったことを今でも鮮明に思い出します。そして、ご周知のとおり、やがてソ連邦のコルホーズ、ソホーズの集団農業は、父の言う通り崩壊するものとなったのです。

 

自発性なくして、農業は成功しない

農業は、普通の企業経営と同じ考え方では、その経営は成り立たない、つまり農業は中で働く人が、上司から管理される関係では成果がおぼつかないということなのです。農業には、参加して働く人の自発的な意欲が大切です。農業に自らが参加し、自らが経営することは理想ですが、家族経営では規模が小さく、機械化等のコストダウンにも限界があります。また、家族経営の中で、農作物も、畜産も、加工も、販売も、そして経営や技術開発も、すべてをやり切ることは困難に近いことでしょう。

そこで、それを解決するのにチームとしての多数な人材が必要となります。しかも、人数が増えても、参加者に自発性や個性が漲り、しかも、会社というチームとして世界に通用する力を発揮する、そんな強力な共通活力集団が必要なのです。

秋川牧園、全員集会、2017年7月

平成29年7月に行われた全員集会の様子。

その具体的な形として、食の安心安全、健康創出チームとしての秋川牧園の経営参加制度が、1972年の創業時から歩み始めたのです。経営参加制度とは、簡単に言えば皆で経営参加する制度です。具体的には、年4~5回、社員全員が集う『全員集会』があり、事業計画、決算、昇給、労働分配(ボーナス)等について説明協議し、採決される仕組みが機能しています。会社の中で、情報が共有されてこそ、自発性が漲り、農業としての力が発揮される。社員が自発的に働く関係は、農業の会社にとって、とても大切なことなのです。秋川牧園が農業の企業化を実現し、同じ農業でも、無農薬栽培や有機農業、無投薬飼育等、より難易度が高い困難な課題を解決しながら、安心安全な食べ物のパイオニアの役割を果たしてきた原動力は、こんなところに潜んでいるのです。

では、皆さん、9月号でお会いしましょう。

 

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