更新日:2015年04月13日

花粉症に効くお米? 遺伝子組み換えの問題点とは?

ご飯で花粉症対策?

ご飯、花粉症予防今年も花粉症の季節は後半となってきましたが、辛い症状でお悩みの方は、「ご飯で花粉症対策」と聞けば、きっと期待されることと思います。

これは、お米自体にスギ花粉から出る抗原と似た抗原を作らせ、これを毎日食べ続けることによって、スギ花粉から本当の抗原が入ってきた時にも花粉症の症状が出にくくなる、という技術です。まだまだ実用化はされていませんが、臨床試験で効果も確認されているとのことですから、近い将来、スーパーなどに並ぶようになるかもしれません。

しかしよく考えてみると、稲同士をいくら交配しても、お米がスギ花粉の抗原をつくる品種を作り出すことは不可能なはず。そこで、使われているのが「遺伝子組み換え技術」なのです。

 

遺伝子組み換えとは?

遺伝子組み換えとは、細菌などの全く別の種の生物の遺伝子の一部を切り取って、別の生物の遺伝子に無理やり組み入れることによって、自然界では存在しえなかった新しい技能や性質をもった生物を作り出す技術のことです。

海外では、遺伝子組換え作物の栽培面積が年々増え続けています。日本では栽培はまだ実質的にゼロな状態ですが、食の輸入大国ですので、大豆やトウモロコシや菜種など、遺伝子組換え食品が私たちの食卓にのぼる機会が既に多くなっています。

E019実用されたものでは、例えばラウンドアップという除草剤で枯れない大豆や、虫を殺す毒素を自らつくるトウモロコシ、天然のものより数倍早く成長するサケなどがあります。

一見、人間にとって利益となりそうな、これら遺伝子組換え作物ですが、実はさまざまな問題が隠されており、世界中の科学者や消費者などから反対の意見が集まっています。図式としては、推進したいアメリカと、反対するEUといった感じです。

その問題点は大きく分けると、その食品の安全性と、生物多様性など生態系に与える影響の2点です。ここでは、「交雑」をキーワードに、生態系に与える影響についてお話したいと思います。

 

自己増殖する生き物であること

過去、人類は農薬や合成添加物について、当初は問題なしと判断して大量に使用し、後々になってその安全性の問題に気づき、生産を中止するということを何度も繰り返してきました。農薬のDDTや合成保存料のAF2などが有名です。しかし、それでも生産を中止すれば、その農薬がそれ以上増えることはありません。土壌に残留した農薬も年月と共にゼロになっていきます。

しかし、生物に組み込まれた遺伝子は、生物の生殖によって、自己増殖を続けていきます。ちょっと例が異なりますが、琵琶湖に入った外来種のブラックバス一つとっても、私たちはゼロにすることはできません。そのため、例えば、後になって、除草剤に枯れない菜種の問題点が明らかになったとしても、その時にそのDNAをもった植物が拡散してしまっていると、そのDNAを全部を回収することは、もはや不可能となるのです。

 

止められない交雑のリスク

ここで、ちょっと気になる情報をご紹介。

イネの交雑試験結果(北海道)表2は、北海道で行われた交雑試験の結果です。遺伝子組換え作物が試験栽培されている場所から、一定距離離れた場所での交雑率を調べています。

結果を見ると、例えばイネでは650mも離れていても0.028%の交雑率だということがわかります。栽培場所から離れていても、完全に交雑を防止することができないことがわかります。

遺伝子組換えナタネ、自生この危機は、すでに私たちの身近なところでも実際に起こっています。輸入した遺伝子組換えの菜種ですが、荷揚げした港からトラックで全国さまざまな場所に輸送されます。その途中で、荷揚げした港やトラックからこぼれ落ち、飛散して自生してしまっているのです。

グリーンコープ共同体が行っている「自生遺伝子組換えナタネ汚染調査」では、西日本を中心に全272ヶ所で調査を実施、そのうち大阪、岡山、熊本などの30検体で遺伝子組換えナタネが自生していることがわかりました。

 

長い時間軸で考える必要性

地球に生命が誕生して40億年。今の地球の生態系は気の遠くなるような年月を経てつくられています。しかし、私たち人間は、10年とか、せいぜい100年といった短い時間軸の中で生きています。1万年といわれた時点で、その時間の長さの意味を想像することができないのです。

確かに、花粉症を和らげるお米があると便利かもしれません。しかしその一方で、自然にある稲がスギ花粉の抗原をつくれないことの意味を、私たちは理解できていないのも事実です。同様に、なぜ一般の大豆はラウンドアップで枯れるのか、その生態系における意味を人類はまだ知っていません。

その「知らない」ということに対して、私たちはもっと謙虚であるべきでしょう。その面からも、遺伝子組み換えの問題点を、私たちはもっと認識していく必要があると思います。

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