更新日:2016年01月29日

有機薄口醤油のふるさとをたずねて/片上醤油(奈良県)

秋川牧園×片上醤油

 

「片上醤油」は創業80余年。吉野杉や紀州梅の産地にほど近い奈良県御所市にある、老舗の醤油醸造です。

片上裕之さんと奥様の久美さん

片上裕之さんと奥様の久美さん

3代目の片上裕之さん(54)は、大学で醸造の研究をして卒業後23歳で、蔵をたたもうとしていた先代(祖父)の醤油蔵を継ぐことに。当時、醤油づくりは脱脂加工大豆でつくるのが主流。

年季の入った大豆蒸し釜

年季の入った大豆蒸し釜

先代も脱脂加工大豆を使って、保存料や甘味料などの添加物を加えた醤油を作っていましたが、丸大豆使用の醤油需要が世間で少しずつ高まっていたこと、そして何より「蔵の中に専用の古い蒸し釜が残っていた」ことが後押しとなり、丸大豆使用に切り替え、醤油づくりをスタートしました。現在ご案内している『有機薄口醤油』は年間3トン製造。「自分の手の届く範囲でコツコツつくらせてもらってます」とはにかむ片上さんです。

桶に醤油を「つくってもらう」

新旧様々な桶が実に35本もある片上さんの醤油蔵。職人のノウハウを次世代につなぐため、機械管理をする蔵元が活躍する昨今ですが、片上醤油では積み重ねた経験をもとに、すべてをまさに手作業で行っています。また、醤油づくりの姿勢はとても謙虚。「桶1つひとつには、住み着いた麹菌の種類や量によって“個性”があるんです。(原料の)大豆の出来は毎年違うでしょ。そこにその年の気温条件と、桶の個性を含めて、『今年はこの桶に任せてみよか』『今回クセがありそうやから、これにしてみよ』って、桶にお願いするんです。」

そして、現在「仕事中」の桶の1つの「ガス抜き」作業を実演してくれることに。

攪拌は製造工程の中で、一番人間の感性に頼る作業」と片上さん。

攪拌は製造工程の中で、一番人間の感性に頼る作業」と片上さん。

深さ2mの桶の中心あたりに差し込んだかい棒を片 上さんが引き上げた瞬間、静かな蔵の中に「グウゥ」という鈍い音が響きわたります。「まさしく、 お腹にガスがたまった状態です」と笑いながら数回かき混ぜた片上さんの額には汗がびっしょり。最初は2日に1回程度、その後 菌の発酵が進むと、熟成具合を見てかき混ぜる回数を減らしていくそうですが、まんべんなくかき混ぜるのはかなり大変そうです。

 

有機醤油をつくる(購入する)意味とは

『有機薄口醤油』の原料である大豆・小麦は、カタログでもご案内している「金沢大地(石川県)」がつくった有機栽培のもの。価格も、大手メーカーがつくる「有機醤油」(※海外産有機栽培原料使用)の1.5倍はするような醤油を、私達は片上さんに作ってもらっています。

「(大豆の)有機栽培は本当に大変。雑草がぼうぼう生えてどれが大豆かわからないくらい。だからといって値段が高いと売れない。だから国産の有機栽培を応援するなら『あなた(私)はどんな国に住みたいですか? 』と投げかけるような社会運動にしていくくらいやらないといけないのかもしれません。僕は醤油屋として、少しでも役に立てたら…と思っています」と話す片上さん。

入る前から醤油の香りが漂う。 まさにいい感じの醤油蔵。

入る前から醤油の香りが漂う。
まさにいい感じの醤油蔵。

作物やその加工品を選ぶ理由に、「化学合成農薬や化学肥料を使っていないから」という考え方を持つ人もいるだろうと思いますが、こうして直接生産者の方達に会って、作る過程や考えを伺うと、「自分や家族の健康のために」の他に、「日本でまじめな商品をつくっているこの方達を応援したい」という自分の“軸” ができる気がします。この醤油から、片上さんの想いはもちろん、『有機薄口醤油』を販売する私達の「良い生産者を応援したい!」という気持ちが伝わるといいな…と思います。大柄な体格とは反対(?)に、穏やかな口調でユーモラスに話してくださる片上さんですが、「毎年出来が違う醤油。だからこそ、最高の醤油を追いかけ続ける」という職人魂の持ち主なのでした。

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